近年、各企業の事業活動においてエコやサステナビリティの重要度が増してきています。
一方で、会社案内やカタログなどの広報・広告宣伝ツール制作を検討する場合に、「どのようにエコに配慮すればいいのだろう」といった疑問を抱かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、印刷業界の技術や素材の進歩により、今は環境に優しい印刷オプションがたくさんあります。今回の記事では、エコな印刷の基礎として、印刷物の環境問題から、エコフレンドリーな印刷オプションまで紐解いて解説します。
目次
印刷に関係する環境問題
印刷に付随して考えるべき環境問題はいくつかありますが、ここでは基礎知識としてインクと紙について取り上げます。
インク
印刷に欠かせないインクは、主に色を決める着色剤(顔料)、インクの転移・密着・光沢を左右するワニス(溶剤)、印刷効果を調整する添加剤で構成されています。
このうち、ワニスに含まれる溶剤で石油系資源を用いるものにはVOC(Volatile Organic Compounds)が含有されていることがあります。VOCは、トルエンやベンゼン、キシレン、酢酸エチルなどに代表される揮発性有機化合物のことです。蒸発しやすいVOCは、光化学オキシダント(光化学スモッグ)やSPM(浮遊粒子状物質)、PM2.5 などの大気汚染の原因物質の一つです。また、VOCの排出量は大気汚染防止法による規制の対象となっています。
紙
紙には原料となる木材が必要です。しかし、世界の森林は土地の農地転換や違法伐採、焼畑農業、森林火災などにより減り続けています。現在は森林保護の意識の高まりなどにより減少スピードは多少鈍化傾向にはありますが、現在でも世界の森林面積約41.1億ヘクタールのうち、年平均で約470万ヘクタールが減少しているそうです(2010~2020年)※。
森林破壊が進めば、すみかを失った野生動物が絶滅へと追い込まれ、生態系の崩壊を招くことにもつながりかねません。また、森林減少に伴う二酸化炭素吸収量の減少により、地球温暖化が進行するなどの悪影響もあります。
環境に優しい印刷オプション
環境問題とも関わりの深い印刷ですが、各印刷会社で環境に優しい印刷オプションを多く展開しています。また、通常よりも割高になりがちな面はあるものの、エコに配慮している企業というアピールにつながるというメリットもあります。代表的なものをいくつか紹介します。
植物油インキ(ベジタブルインキ)
植物油インキとは、再生産可能な植物油を一定以上含むインクのことを指します。植物油には大豆油、アマニ油、ヤシ油、パーム油など植物由来の油や、再生油が使われています。植物由来のため、石油系の溶剤に比べて生分解性があり、VOCの排出もほとんどないため、環境に優しいインクです。
1990年頃からは、環境への配慮や石油ショックの影響で大豆油インキ(ソイインキ)が広く使われていました。しかし、穀物の凶作やバイオ燃料の需要拡大などにより、価格が変動しやすかったため、大豆油だけではなく他の植物油へと原料が拡大され、多種多様な植物油インキが登場したそうです。
FSC®認証紙
FSC®認証とは、適切に管理された森林からの木材であることを証明する認証制度です。FSC®認証された紙を用いることで、不適切な管理や違法伐採によって得た紙資源を間接的に利用してしまうことを回避することができます。
また、FSC®認証は大きく以下の二つに分かれます。
- FM(Forest Management、森林管理)認証…森林が責任を持って管理されているかを認証します。
- CoC(Chain of Custody、加工・流通過程)認証…認証林から収穫された認証材が消費者の手に届くまでの加工・流通過程を認証します。
FSC®認証を受けた製品を確実に消費者の元に届けるため、森林管理認証に加えて、サプライチェーン上の認証制度も取り入れられているのです。
LIMEX(ライメックス)
LIMEXは株式会社TBM(本社・東京)が開発した、石灰石を主原料とする新素材で、LIMEX Sheet(ライメックスシート)は紙を代替することができます。石灰石はサンゴや貝類などの生物の殻が堆積してできたもので、世界中に豊富に存在します。資源の乏しい日本においても自給自足が可能な資源とされています。
森林資源を用いないことや、印刷業では大量に使用する水を製造時にほとんど使わないことから、資源保全への貢献が可能な新素材として注目を集めています。
OS工芸社のエコな印刷への対応
OS工芸社でも広報ツール制作のご相談をいただく際、「エコに配慮していることをアピールしたい」といったお声をいただくことがあります。これまでに、プラスチックタイプの手提げ袋を牛乳瓶キャップ再生ポリにしたり、FSC®認証紙での販促用紙袋をご提案したりといった実績があります。どうぞお気軽にご相談ください。
ツールの在り方そのものからもご提案
私たちは、ツールの在り方そのものから一緒に考え、ご提案します。そうしたご提案によりペーパーレスにつなげた事例もあります。
例えば日本精線株式会社様では、製品カタログが10種類ほどあり、しかもそれぞれ独自デザインで展開されていました。種類の多さによる使いにくさや、ブランドイメージの不統一といった課題がありました。
そこで当社は、「カタログの集約化」と「Webサイトリニューアル」を同時提案。カタログはWebサイトとデザインを合わせることでブランドイメージの統一を図りつつ、綿密な精査とヒアリングにより4種類にまで絞りました。
また、Webサイトでは、製品情報を整理し直した上で、新製品向けのページも制作。更新が比較的容易なWebサイトも活用することで、効率的かつ効果的な製品情報のPRが可能となりました。カタログの集約やWebサイトとの連動によりペーパーレスにも貢献しています。
今回の記事のまとめ
- 印刷では古くからインクや紙などの環境問題を抱えてきた
- しかし、現在は環境に優しい印刷オプションがたくさんあり、それらを用いることで環境配慮企業としてのPRをすることもできる
- OS工芸社は印刷オプションに加えて、ツールの在り方そのものから提案が可能
会社案内やカタログは自社の概要や魅力を伝えるための基本的かつ重要なツールです。だからこそ、素材や在り方そのものをじっくり検討することで、サステナビリティや環境に配慮した企業であることを効果的にPRすることも可能です。
OS工芸社では様々な媒体での制作実績からお客様に合ったツール制作をご提案します。ぜひ、お気軽にご相談ください。
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