最近、環境保全や経費削減、またWeb利用が常識となったなどの理由から、パンフレットなどの印刷物の印刷部数を減らしたり、印刷をせずにWebサイトでの公開に切り替えたりしたいと考えている企業も多いかと思います。
そこで今回は、「印刷物」ではなく、印刷物の「デザインデータ」を納品してもらうことが可能なのか、また、デザインデータを納品してもらうことへのメリットやデメリットについてご紹介いたします。
目次
データ納品は可能?
制作会社にとってデザインデータは、企業秘密の塊と言えるため、編集可能なデザインデータの納品はNG、もしくは契約書を交わしての買い取りという形をとっている制作会社がほとんどかと思います。
OS工芸社でも、編集可能なデザインデータについては、ご希望いただいた場合にのみ、その意図をお聞きし双方納得したうえで契約書を交わしてから購入をしていただいています。ただし編集不可能なデザインデータに関しては、用途に合わせた形でご納品可能ですので、お気軽にご相談ください。
編集可能なデザインデータ、編集不可能なデザインデータとは?
前述した編集可能なデザインデータ、編集不可能なデザインデータとはどのようなものを指すのでしょうか?
編集可能なデザインデータ
AI(Adobe Illustrator)データ
Adobe社が開発したデザインソフト「Adobe Illustrator」専用のファイル形式です。拡張子は「.ai」。
ベクター形式※での保存が最大の特徴で、デザインデータを劣化させることなく拡大や縮小ができるため、さまざまな制作現場で広く使用されています。
- 画像・文字などのデータを点、線、面の位置や長さ、大きさの情報をもとに数値化して記録、表示する保存形式。
INDD(InDesign Documents)データ
Adobe社が開発したデザインソフト「Adobe InDesign」専用のファイル形式です。拡張子は「.indd」。
最もメジャーなDTPソフトの1つとして、書籍や雑誌といった、複数ページにまたがるレイアウトのデザインに広く使用されています。
PSD(Photoshop Documents)データ
Adobe社が開発したデザインソフト「Adobe Photoshop」専用のファイル形式です。拡張子は「.psd」。
写真の加工や色の調整、画像の合成などの画像編集が可能で、デザイナーだけではなく、カメラマンやイラストレーターからも高い人気を誇っています。
PSDデータは、「統合」をする前のデータであれば、編集が可能になります。
編集不可能なデザインデータ
PDF(Portable Document Format)データ
Adobe社が開発した、印刷ページと同じ状態で保存が可能でPCやスマートフォンなどどんな環境でも基本的に同じように表示ができるファイル形式です。拡張子は「.pdf」。
簡単に圧縮ができ、制作物のデザイン確認等に非常に多く利用されています。有料のソフトを使用しないと編集作業ができず、編集したとしても専門知識が無いと印刷に適したデータになっていない場合が多くあります。
編集可能なデータ納品のメリット・デメリット
では、印刷物を編集可能なデータ納品にした際の、メリットとデメリットはどんなものがあるでしょうか。具体的に見ていきましょう。
メリット
何かあった際のバックアップにできる
地震や火災など、どうしようもない理由で制作会社の所持するデータが消えてしまうことや、倒産や与信調査から制作会社の変更を余儀なくされるといったことは、ありえないことではありません。そういった際のバックアップとして、編集可能なデータが自社にあることはリスクの低減と安心につながります。
自社で修正作業が可能
印刷物に掲載した内容の数字の更新だけといった、軽微な修正のために予算を取るのが難しい、また制作会社とのやりとりが面倒という場合、編集可能なデータがあれば、自社で修正作業が可能になります。ただし、下記のデメリットで記載の通り、データの編集用ソフトやフォント、編集できる人材を自社内で用意できる場合のみのメリットになります。
コストカットできる可能性がある
前述した通り、自社で修正ができるようになれば、その分の発注費用を削減できることになります。また、制作会社自体の変更や印刷会社の変更を行えば、これまでよりもコストカットできる可能性があります。
デメリット
初期費用が掛かる
「データ納品は可能?」で記した通り、編集可能なデザインデータを手に入れるには、ほとんどの場合、購入となるため印刷物での納品よりも高額な費用が掛かります。
専門ソフトやフォントの購入が必要
編集可能なデザインデータは、データだけ入手しても編集をすることはできません。そのデータを開くための専門ソフトのインストールが各々必要です。
「編集可能なデザインデータ」で記した通り、Adobe社製のデザイン用アプリケーションソフトが編集によく使用されているのですが、現状、これらの専門ソフトを使用するにはサブスクでの月額登録が必須です。プランにもよりますが、大抵の場合、1ライセンスにつき月額5,000円以上、年間60,000円以上の費用が掛かります。
また、デザイン内に有料のフォントが使用されていた場合は、そのフォントの購入も必要になります。手持ちのフォントへの変更も可能ではありますが、デザインがめちゃくちゃになってしまったり、誤字脱字の可能性があったりするためお勧めはできません。
専門ソフトの編集ができる人材が必要
専門ソフトがせっかくあっても、その編集作業をできる人材が社内にいなければ本末転倒です。誰もいない場合は、操作方法の習得からになりますので、制作会社とやり取りをするよりも時間がかかってしまう可能性もあります。
別会社の選定や編集作業、印刷会社への入稿作業の発生
「メリット」で記した通り、制作会社や印刷会社を再選定すれば、コストダウンできる可能性がありますが、その分、選定作業が発生します。また、自社で編集作業や入稿作業を行う場合はその作業も発生します。特に入稿作業は、印刷に対しての専門知識なども必要になってくるため、コストダウンできる金額に対して発生する作業が割に合わない場合も多くあります。
制作会社との関係の悪化
制作会社とのパワーバランスを盾に編集可能なデザインデータを入手した場合、制作会社との関係性が悪化し、最悪、以降の制作依頼を受け付けてもらえない可能性があります。「企業秘密の塊」を入手することの意味を考え、誠意をもって相談することをお勧めします。
自社の目的に適したPDFデータでの納品がおすすめ
これらのメリット・デメリットを考えた時、最もお勧めするのは自社の目的に適した「PDFデータ」での納品です。特に以下の場合は、PDFデータでの納品をお勧めします。
Webへの掲載
Web掲載に適切な規格かつ、Webユーザーからのプリントアウトや閲覧環境を鑑みて、片面ずつのPDFデータと見開きのPDFデータを両方制作・納品するといったことが可能です。
デジタルブックを制作したい場合も、PDFデータの入稿可能な会社が多く存在しますので、わざわざ、編集可能なデザインデータを入手する必要は薄いといえます。
ネット印刷や自社選定の印刷会社への変更
昨今、PDFデータでの入稿を勧めている印刷会社が多く存在します。利用したい印刷会社の入稿方法を制作会社に連絡し、その通りにPDFデータを制作・納品してもらえば、費用も入稿作業も少なくすることが可能です。修正が出た場合も、多少費用は発生しますが都度対応してもらえることがほとんどでしょう。
OS工芸社のデータ納品における実績例
OS工芸社では、お客様のご相談内容に寄り添い、目的に適した形式での納品を提案しています。その実績を一例ご紹介します。
アルインコ株式会社様
社外広報用の冊子と、社内ネットに掲載するPDFデータという、印刷物とデータの2種類をご納品しています。
社内ネット掲載用データが、全ページのデータであるのに対し、社外用冊子は、社員の個人情報等が掲載されているページを削除し、ノンブルも変更したデータを別途作成し印刷。この調整を行うことで、取引先への配布やエントランス配架を可能にし、社外へもアルインコ株式会社の魅力と情報を発信する広報ツールとしてご活用いただいています。
今回の記事のまとめ
- 印刷物のデータ納品は、難しいが条件次第で可能
- バックアップデータを持つ安心感や、コストカットの可能性があるといったメリットがある
- 初期費用や専門ソフト等購入費の発生、自社内での業務発生といったデメリットがある
- 自社の目的に合い、かつ、お互いが納得するデータ納品の形を制作会社とともに見つけることが大切
時代の流れや使用目的によって、納品形式が変わっていくことは当たり前のことです。しかし、編集可能なデザインデータは、制作会社にとって非常に大切なものであり、かつ専門外の人にとっては扱いが大変難しいものでもあります。入手を試みる際は、そのメリット・デメリットを考慮したうえで、制作会社とともにお互いが納得できる納品形式を探してみてください。
OS工芸社では、お客様の目的に適した納品形式の提案と、その内容に応じた細やかな対応を行っています。制作依頼の際には、納品形式についてもぜひご相談ください。
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