昨今、「障害のある人への合理的配慮の提供」の義務化で注目されている「アクセシビリティ対応」という言葉を耳にしたことはありませんか。Webサイトの運営にも関わる言葉なのですが、具体的な内容についてまでは、実は分かっていないという方も多いのではないでしょうか。
この記事ではWebサイトにおけるアクセシビリティ対応、「ウェブアクセシビリティ対応」について解説します。
目次
アクセシビリティ対応の定義と重要性
アクセシビリティ対応とは、すべてのユーザーが情報やサービスに支障なくアクセスできる状態を指します。
アクセシビリティが考慮されていない場合、一部のユーザーは情報へのアクセスが制限され、機会を奪われてしまう可能性があります。アクセシビリティ対応は単なる法的な義務を超えて、多様なユーザーのニーズを尊重する重要な要素です。
アクセシビリティ対応の法的要件と義務化の背景
アクセシビリティ対応が法的に義務化される背景には、情報への平等なアクセス権が重視されていることがあります。多くの国がこれを社会的な義務と捉え、段階的に法律を整備しています。
例えば、アメリカのADA(Americans with Disabilities Act)や、日本の「障害者差別解消法」があります。この義務化により、多くの企業は法令を遵守し、社会的責任を果たすことで、より包括的な社会の構築に貢献することが求められています。
ウェブアクセシビリティ対応とは
ウェブアクセシビリティ対応とは、すべてのユーザーが情報に平等にアクセスできるようにするための取り組みを指します。特に視覚、聴覚、身体的障害を持つユーザーにとって、インターネットがより利用しやすくなるように設計されています。義務化が進む中で、多くの企業がウェブアクセシビリティ対応に取り組んでいます。
ウェブアクセシビリティ対応がもたらすメリット
見込み顧客の拡大
ウェブアクセシビリティ対応を行うことで、より多くの人々が利用できる環境が整い、これまでアクセスが難しかった見込み顧客にも企業側からアプローチすることが可能になります。幅広い層へのサービス提供が実現し、結果として顧客層の拡大につながります。この取り組みは、社会的責任を果たすだけでなく、ビジネスの成長にも貢献します。
SEO対策
ウェブアクセシビリティ対応は、SEO対策としても効果があります。例えば、適切な代替テキストの使用やコンテンツの構造化は、検索エンジンのクローリングにも有効であり、Webサイトの検索順位向上につながります。さらに、ウェブアクセシビリティに配慮した設計は、読み込み速度の改善やユーザーエクスペリエンスの向上にもつながり、結果として検索エンジンからの評価が高まり、より多くのトラフィックを獲得できる可能性が広がります。
企業イメージの向上
ウェブアクセシビリティ対応は、企業イメージの向上にも大きく貢献します。すべてのユーザーにとって使いやすい環境を提供する姿勢は、社会的責任を果たす企業としての評価を高め、信頼性や好感度を向上させます。また、ダイバーシティやインクルージョンに積極的に取り組む姿勢が、顧客やパートナー企業に対してポジティブなメッセージを発信し、長期的なブランド価値の向上につながります。
ウェブアクセシビリティ対応の基準
ウェブアクセシビリティ対応を行うにあたって参考にする、基準やガイドラインにはどういったものがあるのでしょうか。
ここでは代表的な2つをご紹介します。
WCAG
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines、ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン)は、Webサイトやデジタルコンテンツを誰もが利用できるようにするための国際的なガイドラインです。特に、視覚や聴覚、身体的、認知的な障害を持つ人々がアクセスしやすいコンテンツ作成を支援します。
WCAGでは「認知可能(Perceivable)」「操作可能(Operable)」「理解可能(Understandable)」「堅牢(Robust)」という4つの原則に基づいた要素を満たすことが求められます。ガイドラインには異なるレベル(A、AA、AAA)の基準があり、コンテンツのウェブアクセシビリティの達成度合いに応じて評価されます。
WCAGのバージョンは定期的に更新されており、2024年11月現在の最新版はWCAG2.2です。
- 国際規格であるISO/IEC 40500:2012はWCAG 2.2の内容で更新されることが周知されています
JIS X 8341-3
JIS X 8341-3は、日本におけるウェブアクセシビリティの標準規格で、ウェブコンテンツが誰にでも利用しやすいようにするための指針を提供しています。特に、視覚や聴覚、身体的・認知的な障害を持つ人々でもWebサイトやウェブサービスを問題なく利用できるようにすることを目的としています。
この規格は、国際的なWCAGを基にしており、Webサイト運営者がコンテンツのウェブアクセシビリティを高めるために守るべき基準や実践を定めています。JIS X 8341-3にも、達成基準のレベル(A、AA、AAA)があり、これに従うことでWebサイトの使いやすさを向上させることができます。
それぞれの達成基準について
上記で述べた2つの基準では、共に達成基準のレベルが設けられています。
定義されている「A、AA、AAA」の中からどのレベルに適合するか決定しましょう。
JIS X 8341-3:2016の対応度と表記の条件
表記例:JIS X 8341-3:2016の適合レベルAAに準拠
ウェブアクセシビリティ対応方針の提示・公開 | 試験の実施 | 結果の公開 | |
---|---|---|---|
準拠 | 必要 | 必要 | 必要 |
一部準拠 | 必要 | 必要 | 不要 |
配慮 | 必要 | 不要 | 不要 |
ウェブアクセシビリティ対応への注意
ウェブアクセシビリティは、合理的配慮の義務化が進んでいますが、対応には専門知識やスキルが必要で、実装には時間やコストがかかることもあります。
焦らず、自社のWebサイトに必要な対応をしっかりと見極めて、実装を進めることをお勧めします。
OS工芸社のできること
OS工芸社では、ウェブアクセシビリティ対応の要望がないサイトに関しても、コントラスト比への配慮など「どなたでも使用しやすい」デザイン設計、アクセシビリティを意識したコーディングを行っております。
また、ご希望の基準レベルに合わせてのアクセシビリティ対応も行っています。アクセシビリティチェックを元に行うことも可能ですので、お困りごとがありましたらお気軽にお問い合わせください。
今回の記事のまとめ
- ウェブアクセシビリティ対応とは、すべてのユーザーが情報に平等にアクセスできるようにするための取り組みを指す
- ウェブアクセシビリティ対応は企業側にも「見込顧客の拡大」「SEO対策」「企業イメージの向上」などのメリットを生む
- ウェブアクセシビリティ対応には明確な基準があるため、それに基づいて対策を行う必要がある
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